楽曲情報
作曲家名:石原 勇太郎 (Yutaro Ishihara)
演奏時間:5分00秒
グレード:3(中〜上級)
スタイル:アンサンブルレパートリー
楽曲紹介
2014年に作曲した、3つのクラリネットのための作品です。題名の「性格的小品」とはこの作品の固有名詞ではなく、西洋芸術音楽の中で、特にロマン派(18世紀末から19世紀)のピアノ作品に見られた曲の種類のことを示す用語です。英語では「character piece」と呼ばれ、F.メンデルスゾーン=バルトルディやF.ショパン、J.ブラームスの作品が有名です。一般的に、特定の形式に縛られず、自由な形式の中で、何か情景を思い浮かべたり、何か感情を呼び起こすような作品が「性格的小品」と呼ばれることが多いです。
本作≪性格的小品≫は、モダンな響きと、しっかりとした調性に基づいた響きを組み合わせることを試みています。冒頭で提示される音群が、作品全体の響きの要です。この音群はどの調に所属するのか曖昧なものなので、いわゆる「迷子」状態の響きです。次にどこに進むのかは、その時になってみなくてはわからないという、少し不安のある雰囲気を醸し出します。一方11小節からのAllegroでは、主題と呼んでも差し支えのない旋律がいくつか出てきます。冒頭の雰囲気とは異なり、次の道筋がしっかりと予想できます。これら2つの状態が交互に現れながら、曲が進んでいきます。
冒頭で述べたように、「性格的小品」は何か情景や感情を呼び起こすものですが、本作は、作曲者自身によって何か特定の描写を行うというようなことはしていません。しかし、作品の中には確かに音の物語が存在し、目には見えない世界が広がっています。演奏してくださる皆さんが、この作品の「性格」を解釈し、その世界を聴衆の皆さんに届けていただけることを願い、あえて「性格的小品」という曖昧な題名を付けました。
(石原勇太郎)
楽器編成
Bb Clarinet 1
Bb Clarinet 2
Bb Bass Clarinet
石原 勇太郎(Yutaro Ishihara)

1991年千葉県八千代市出身。12歳よりコントラバスを始める。2014年東京音楽大学器楽専攻(コントラバス)卒業。同大学音楽学課程修了。2016年東京音楽大学大学院 音楽教育専攻音楽学研究領域 修士課程修了。2014年、「天空の旅―吹奏楽のための譚詩―」で第25回朝日作曲賞受賞、2015年度全日本吹奏楽コンクール課題曲として採用される。これまでにコントラバスを幕内弘司、永島義男、作曲を村田昌己、新垣隆、藤原豊、指揮を三原明人の各氏に師事。現在、東京音楽大学大学院 音楽専攻(音楽学) 博士後期課程在学中。また平成28年度給費奨学生に選ばれる。藤田茂氏の指導の下、アントン・ブルックナーの交響曲に関する研究に取り組んでいる。